自動運転車と交通事故【近未来、システムの不具合で事故ったら!?】
かのグーグル様が、最近,全自動運転の試作車を作成したと発表しました。ここ最近話題となっている自動運転システム搭載車であり,日本メーカーもしのぎを削って開発しているところですが,グーグル様の試作車で驚くべきポイントは,ハンドル,アクセル,ブレーキがないということ。
つまりは,自動車に乗っているときでも運転者は不要なのだから,寝ていたり,新聞読んだり,ゲームもすることが出来てしまうのです。この夢のような技術が試作段階とはいえ,作られたのだから胸がわくわくしてしまいます。
でも,自動運転車を乗る人が絶対に気になること,そう!
事故を起こしたときの責任はどうなるの?ということです。
一般の自動車の運転者は!?
まず,運転者の責任は現行法だとかなりの広範囲で認められています。
自賠法第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
この法律によって,事故が起きてしまった場合,運転者は原則的に損害賠償の責任を負うこととなり,責任を免れるのは,自分の不注意がなく,他人に責任があり,さらに自動車に欠陥又は機能障害がない場合となります。このため,現在の実務上では,運転者の責任は広範囲で認められており,責任を負わない場合は非常に限られています。
自動運転車だと!?
では,自動運転車で事故を起こした場合はどうなるのでしょうか。
上で見たように自賠法第三条によれば,運転者が責任を免れるのは自動車に欠陥又は機能障害がないことが必要です。ということは,現行法だと,自動運転システムに欠陥があって事故を起こしてしまった場合,いくら運転手に不注意がなかったとしても運転手が責任を負うことになってしまいます。
そもそも自賠法は,被害者の損害は保険でカバーさせるために,運転手に広範囲の責任を認めているのですが,自動運転車でもこの考えを当てはめても果たしてよいのでしょうか。運転をシステムに任せていたのに,そのシステムの不具合で事故が起きてしまった場合でも運転手が責任を負うのなら,一般の人たちに普及するとは到底いえないでしょう(もちろんメーカー側も責任を負うことになると思いますが。)。
このように自動運転車の責任の分担方法については,新たに法改正が必要なのです。国や自動車メーカーはこの点についても熟慮を重ねていることと思います。われわれもこの議論の行く末を注意深く見守る必要がありますね。