購入者(お客さん)が納車を拒否している場合の対応方法【自動車販売業者はどうすべきか?】

受領拒否

 これまで,納車が遅れた場合について記事(損害賠償クレームについてはこちらの記事、解約クレームについてはこちらの記事を参照。)を書いてきましたが,今回は逆に,購入者が納車を受けない場合の対処法について,説明していきたいと思います。購入者が納車を受けない場合は,購入者がお金を払いたくないといって拒否する場合や購入者と連絡が急に取れなくなった場合が考えられます。このような場合に,対応を間違えると販売店として思わぬリスクが生じる場合がありますので,注意が必要です。

1 法律的にはどうなる?

1.1 購入者は納車を拒否できるか?

 まず,自動車売買契約を締結すると,販売店は納車をする義務が,購入者は代金を支払う義務が互いに発生します。前回説明したように,この義務は解除しないと消滅しないため,購入者が契約締結後に,気が変わり代金を支払いたくないといっても,通用せず,納車を拒否することはできません。

1.2 強制的に受け取らせることが出来るか?

 そうだといっても,納車は店頭で行う場合であっても購入者の自宅で行う場合であっても,本などと違って宅配便で送りつけることはできないので,購入者の協力が必要不可欠です。そのため,納車に協力しない購入者に対して,強制的にでも納車させることは出来るでしょうか。
 残念ながらこれは法律的に認められておりません。というのは,納車をすることは,販売店からすれば義務の履行ですが,購入者からすると権利の行使ですので,法律的に強制できることはできないのです。

1.3 ではどうすればいいのか?

 納車をしたくても,購入者(権利者)が正当な理由もなく協力しない場合,法律的には「受領遅滞」という状態になります。そして,この受領遅滞の場合には販売店の責任を軽減するなどの制度を法律は認めています。この受領遅滞を以下,説明していきます。

2 受領遅滞

受領遅滞とは,法律用語ですが,その意味は文字通りです。すなわち,上でも見たように,購入者(権利者)が正当な理由もなく納車(権利行使)を拒むことです。

2.1 受領遅滞となるためには

 購入者が納車を拒んだら,即,受領遅滞とはなりません。正当な理由がないことが必要なのです。
この「正当な理由がないこと」にするためには,販売店が納車に向けてやるべきことをやったことが必要となります。
 例えば,青のスポーツカーを購入したのに,赤い軽自動車を納車されそうになったら,購入者としては当然契約と違うといって,納車を拒否しますよね。
 ここまで極端でなくても,契約時についていない傷がついているとか,当初の約束どおりのオプションがついていないとかで購入者が納車を拒否する場合は,販売店が納車に向けてやるべきことをやったとはいえず,購入者の納車拒否は,正当な理由があり,受領遅滞とはならないのです。

2.2 購入者があらかじめ納車を拒否している場合

 販売店が納車の準備をしているさなかに,購入者から連絡があって,そもそも納車を拒否している場合は,納車の日取りさえ決まらないですよね。こんな場合は,販売店は購入者に,納車の準備が出来たことを通知する必要があります。この通知は口頭でもいいのですが,後々もめたときのことを想定して,文書またはメールで送付するべきです。

3 受領遅滞の効果

3.1 責任の免除

 販売店が,納車の準備も済ませて購入者にもその旨通知したのに,納車を拒否する場合は,はれて「受領遅滞」となります。
 この受領遅滞の効果として,当然でもあり重要なのが,販売店は納車義務が遅れたことの責任を免除されることです。納車を拒否していたとしても,購入者に納車されていない状態に変わりはありませんが,納車が遅れたのは,購入者に原因があるのだから,法律はこのような場合,販売店が通常負う責任(販売店のリスクについては前回,前々回の記事を参照して下さい。)を免除しているのです。
 この,購入者に原因があるという点は先ほど説明したように,トラブルに発展したときにもめる原因となるので,文書等でしっかり証拠を作っておきましょう。

3.2 損害賠償請求

 受領遅滞の効果として,損害賠償請求が可能になります。この損害とは納車が遅れたことに起因して販売店が被った損害の事を指します。例えば,納車の日を決めて,購入者の自宅まで届けたのに購入者が自宅にいなくてやむを得ず一旦営業所に帰った場合,再度納車するために届ける必要がありますね。この場合に余計にかかった納車のための費用を,販売店は購入者に対して請求できることになります。
 他にも,購入者が納車を拒否しているので,営業所の敷地で保管していたけれども,スペースが足らなくなって近くのスペースを借りた場合は,購入者が納車を受けていれば販売店としては出す必要のない費用です。そのため,このような余分にかかった保管費も購入者に対して請求できることになります。

3.3 契約の解除

 では,販売店としては,購入者が納車を拒否していることを理由に,契約を解除できるでしょうか。
 これは,残念ながら法律的に認められておりません。
というのは,「1.2」でも見たように,納車とは,販売店からすれば義務の履行ですが,購入者からすると権利の行使であり,強制することはできないので,義務違反とならず解除もできないのです。
 でも販売店としては,購入者が納車を受けないのだったら,早く他の人に売りたいところです。ただ,安心して下さい。納車を拒否している購入者は大抵代金も支払っていないので,代金支払いをしないことに理由に契約解除が出来ます。

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