自動車売買の納車方法①【トラブルを回避するための「もめない」納車】

もめない納車

 販売店の方も,購入者の方も,当たり前のようにやっているけど,不十分な形のものが多いのが,自動車購入後の納車についてです。

特に販売店の方にとっては,日々の業務で納車作業を行っているので,何をいまさらという話ではありますが,当たり前の作業の中にも様々なリスク(トラブルの種)が潜んでいるので,お付き合い願えればと思います。

自動車の納車とは

 自動車の売買契約が成立すると,販売店は購入者に自動車を引渡さなければなりません。

この自動車の引渡しは,売買契約における販売店の基本的な義務です。販売店がこの自動車引渡義務を行わない場合は,購入者から契約解除や損害賠償請求をされることになってしまいます。

 そして,自動車の引渡しとは,販売店にある自動車を,購入者の手に渡し所持させることであり,法律的には占有の移転といいます。自動車の納車とは,販売店の自動車引渡義務を果たすための方法の一つなのです。

 

何を当たり前のことを,と思われるかもしれませんが,自動車の引渡しには,納車以外にも方法があるのです。

例 販売店が修理工場に保管している中古車を売ったが,購入者がしばらくは自動車を使わないのでしばらく修理工場に保管しておいて欲しいと言われた場合

この場合は,実際に納車時期を待つのではなく,販売店は購入者の承諾の下,修理工場に対して,自動車が売れたので以後購入者のために保管することを伝えれば引渡義務を果たしたことになります。これは指図による占有移転という方法です。
ただ,このような場合はレアケースですし,自動車の引渡方法としては納車が圧倒的に多いので,これから納車について書いていきます。

納車時期について

 自動車の納車時期については,売買契約書に明記されていないことも多く,明記していたとしても,双方協議の上定めるなどとしている場合が結構あります。この場合,納車の目安の時期だけは購入者に伝えて,納車が実際にできる段階になって購入者に引き取りにきてもらうよう伝える事になります。

 このように,納車時期を何月何日と定めていないのは,車検切れの車だったりすると登録手続に時間がかかる場合があることや,納車が建て込んでいる時期は整備に遅れが生じることがあるので,販売店からしたら納車が間に合わなくなるおそれを考慮しているからです。

このため,販売担当者としては,納車時期についてある程度の目安は伝えておくとしても,何月何日までと明言することは避けて,もしかしたら遅れる可能性があることもしっかりと購入者に伝えておく方がいいでしょう。そして,実際に納車が予定よりも遅くなる場合は,しっかりと購入者に連絡入れてフォローすることは当然です。

 

 逆に,購入者側からすると,購入後は少しでも早く自動車は手に入れたいところですが,1ヶ月程度だったら待つことができるのではないでしょうか。

 ただ,今度の夏休みに旅行に行く時に乗る計画だから,納車はどうしても夏休み前にほしいというような要望がある場合は,購入者としては売買契約時に販売担当者と話し合って納車時期をきっちりと決めておくべきです。

そして,納車時期を決めた場合には,口約束だけで終わらせるのではなく,しっかりと文書に残すことが大事です。

これによって,販売店側としては納車時期のプレッシャーがあるので,何としても約束時までに納車させようとするでしょうし,仮に納車がトラブル等によって間に合わなくレンタカーを借りることになった場合にはその代金を払ってもらう根拠となります。

 

次は,自動車の納車の際のポイントや納車場所,費用についての記事を書きたいと思います。

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